労災事故(労働災害事故)について知っておくべきこととは?

労災事故(労働災害事故)は、誰にでも起こりうる身近な問題です。
業務中や通勤中のケガ・病気であっても、適切な手続きを行わなければ十分な補償が受けられないことがあります。

労災保険の制度は複雑で、申請内容や証拠の整え方によって結果が大きく変わります。さらに、会社の安全配慮義務違反がある場合には、労災保険だけでなく会社への損害賠償請求も可能です。

このページでは、弁護士に相談する重要性や労災保険制度の基礎、労災が認められるケース、そして会社との交渉を有利に進めるためのポイントを、わかりやすく解説します。

労災事故についてなぜ弁護士に相談すべき?

もしあなたが、働いている会社で大きなケガをしたり、働き過ぎで病気になったりしたとき、どうしますか。ほとんどの方が、「会社に相談して労災保険を使う!」とお答えになると思います。ただ、「労災保険を使って終わり!」では不十分です。なぜなら、労災事故の多くは、会社にも責任があり、労災保険とは別に、会社に対して損害賠償を請求できるからです。
ただ、ご自身で交渉しても、会社が損害賠償の支払いに応じるケースはまれです。会社との交渉を進めるには、弁護士のサポートを受けることが必要不可欠です。
労災事故で大きな被害に遭ったときは、迷わず、労災問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

労災保険制度について

会社に対する損害賠償請求のお話しに入る前に、まずは、労災保険制度について、詳しくご紹介します。

労災保険でどのような給付を受けられる?

労災保険では、以下の4つの給付を受けられます。それぞれ、順番に詳細を説明してまいります。

01療養補償給付

病院・クリニックに無料で通院できる

労災保険には、病院・クリニックに無料で通院できる「療養補償給付」という制度があります。
この制度を利用できる病院・クリニックは、「労災保険指定医療機関」に限られますので、通院前に確認が必要です。「労災保険指定医療機関」は、直接病院・クリニックに確認するほか、厚生労働省のWebサイトで検索することもできます。
療養補償給付については、病院・クリニックで提出します。請求書について、病院・クリニック側で用意していただけるケースもありますので、事前に病院・クリニックへ「どこまで自分で準備しないといけないか」を確認しておくことをおすすめします。

02休業補償給付

仕事を休んだときの生活保障に

療養のために仕事を休まないといけないときは、休業補償給付を受けることができます。休業補償給付は、「給付基礎日額」の60%を受けることができます。直近3か月に受け取った給与を足して、90で割れば、およその「給付基礎日額」を算定することができます。
休業補償給付のほか、特別支給金として、「給付基礎日額」の20%を受け取ることができます。つまり、「給与のおよそ80%」が給付される仕組みです。
休業補償給付については、所轄の労働基準監督署に請求書を提出します。勤務先から請求書作成のサポートを受けられるケースもありますが、その際は、振込先を会社の口座に指定されていないか、確認してください。
振込先を会社の口座に指定すると、休業補償給付から社会保険料が控除されるケースがよくあります。休業補償給付の全額を受給するためには、振込先を会社の口座ではなく、自分の口座に指定すべきです。
なお、社会保険料については、労災事故で休業していても負担する必要がありますが、会社に対する損害賠償請求権と相殺することができます。相殺の仕組みを活かすことで、事実上、社会保険料の損害賠償金を、交渉に先立って回収することができます。

03障害補償給付

治療を続けても治らないときに

治療を続けても「これ以上は治らない」(治ゆ・症状固定)状態になったときは、障害補償給付の請求を検討します。
障害補償給付は、認められる「障害等級」によって、受け取れる金額が大きく変わります。「障害等級」1級~7級が認められると、年金として継続的に給付を受けることができます。「障害等級」8級~14級が認められると、1回だけ給付を受けることができます。
また、障害等級が認められると、障害補償給付のほか、障害特別支給金などの特別支給金を受け取ることもできます。
障害補償給付についても、所轄の労働基準監督署に請求書を提出します。障害補償給付の際には、医師が作成した「労働者災害補償保険診断書」が必要です。この診断書は、障害等級の認定において、大変重要なものです。医師が診断書に記載した内容が、障害等級の認定結果を左右するケースもあります。

04遺族補償給付・葬祭料

ご本人が亡くなったときに

過労死や機械事故などで、ご家族が亡くなってしまったときは、遺族補償給付や葬祭料を請求することができます。
遺族補償給付は、亡くなった方の収入で生計を立てていた遺族の生活保障のために支給される年金です。遺族特別支給金として、300万円を受け取ることもできます。

具体例で給付制度を説明

具体例1

長時間労働で脳梗塞になったケース

Xさんは、運送会社Y社で、トラックドライバーとして勤務していました。ある日、荷物の積み卸し作業中に、突然意識を失って、その場で倒れてしまいました。
Xさんは、救急搬送されて、一命は取り留めましたが、脳梗塞の診断を受けました。退院後も、自分で歩くことがほとんどできない状態になり、会話がうまくできず、覚えたことも数分で忘れてしまう状態になりました。
Xさんは、脳梗塞を発症する1か月前に、120時間残業していました。

労災保険の手続
1. 療養補償給付
Xさんは、長時間労働の後に脳梗塞を発症しましたので、労災認定を受けられる可能性が高いです。そこで、療養補償給付の請求手続を行う必要があります。
療養補償給付が認められれば、無料で医療機関を利用することができます。
2. 休業補償給付・特別支給金
治療を継続している間(症状固定までの間)、休業補償給付や休業特別支給金として、おおむね労災前賃金の80%が補償されます。
休業中の社会保険料については、会社に対する損害賠償請求権との相殺を主張すれば、事実上、支払の負担が生じないようにすることができます。
3. 障害補償給付・特別支給金
Xさんは、退院後も、自分で歩くことがほとんどできない状態になり、会話がうまくできず、覚えたことも数分で忘れてしまう状態ですので、治療を終えた後(症状固定後)に、障害補償給付の請求手続を行う必要があります。
Xさんの症状は、「高次脳機能障害」の認定を受けられる可能性が高いです。
例えば、障害等級2級の認定を受けると、次のような補償を受けられます。
  • ア. 障害補償給付・障害特別年金 労災前の収入の約75%相当額(年金)
  • イ. 障害特別支給金 320万円(一時金)
具体例2

作業中の事故で亡くなったケース

Xさん(男性・40代)は、工場での作業中に、機械に巻き込まれる大事故に遭い、救急搬送されましたが、亡くなりました。Xさんは、生前、妻(40代)と、子2人(15歳・10歳)の4人で暮らしていました。

労災保険の手続
1. 療養補償給付
Xさんは、救急搬送を受けて治療を受けていますので、その分について、療養補償給付の請求手続が必要です。
2. 葬祭料
Xさんが亡くなったときの葬儀代として、次の支給を受けられます。
【金額】
ア. 315,000円+おおむね1か月の給与分
イ.おおむね2か月の給与分
のいずれか多いほうの額
3. 遺族補償給付
同一の生計で暮らしていた遺族の数に応じて、遺族補償給付を受けられます。
今回のケースであれば、同一の生計で暮らしていた遺族が3人ですので、次のような補償を受けられます。
  • ア. 遺族補償年金・遺族特別年金 労災前の収入の約60%相当額(年金)
  • イ. 遺族特別支給金 300万円(一時金)

労災保険の手続を有利に進めるための3ポイント

それぞれ、順番に詳細を説明してまいります。

01「すべて会社まかせ」は慎重に!

請求書の内容を提出前に「自分の眼」でチェック

労災事故の被害に遭ったときに、会社から「労災の手続は、こちらで全部代行します」と伝えられるケースがあります。会社からサポートを受けること自体は問題ありませんが、「すべてを会社任せにすること」は要注意です。
例えば、労災保険の請求書には、「災害の原因及び発生状況」を記載しますが、書類作成を会社に任せっきりにすると、会社に都合の悪い事実の記載を省略されて、真実が労基署に伝わらないことがあります。
労災保険の手続を有利に進めるためには、たとえ会社からサポートを受けられるとしても、請求書の内容を提出前に「自分の眼」でチェックすることが大切です。

02労基署に伝えたいことは書面にまとめる!

伝わらないと、不利になることも

例えば、長時間労働が原因で脳血管・心疾患を発症したケースであれば、発症前にどれくらい仕事をしていたかや、会社からどのような指示を受けていたかなど、ご本人が認識する事実が、重要なポイントの1つとなります。
労災保険の請求手続きをすると、労基署の担当調査官から聴取調査をされることが多いですが、その調査において自分の言い分を伝えようとしても、大切なことを思い出せなかったり、緊張でうまく話ができなかったりするケースが少なくありません。
労災保険の請求をしたいときは、記憶が新鮮なうちに事実関係を書面で整理して、必要に応じて労基署に提出することをおすすめします。そうすれば、聴取調査で「思い出せない」「うまく話せない」問題を解消することができます。

03主治医との信頼関係を大切にする

主治医の診断書が重要なカギに

労基署が労災認定や障害認定を行う際には、主治医に意見照会をすることが、よくあります。また、障害補償給付を請求する際には、主治医に診断書の作成を依頼する必要があります。
そのため、「主治医との信頼関係を大切にすること」は、労災保険の手続を有利に進めるうえで大切なことです。主治医とむやみに敵対しないように心がけることはもちろん、円満なコミュニケーションを意識してください。

会社への損害賠償請求について

労災保険を受け取って終わりではない!

労災保険で足りない治療費・生活費は、
会社に請求できるケースがある

労災事故の被害に遭うと、労災保険を受け取って終了される方が多くいらっしゃいます。ただ、それだけでは不十分です。なぜなら、労災保険だけでは償われない損害の賠償を、会社に請求できるケースがあるからです。
会社に損害賠償を請求できるケースは、「安全配慮義務違反」が認められるケースです。例えば、長時間労働を会社が放置していたケースや、機械の巻き込み事故を防止する対策を怠っていたケースであれば、安全配慮義務違反が認められます。

まずは、具体例で、会社にどのような損害賠償を請求できるか、ご紹介します。


具体例で解説

労災保険とは別に、数千万円の損害賠償が認められるケースも

具体例1

長時間労働で脳梗塞になったケース

Xさんは、運送会社Y社で、トラックドライバーとして勤務していました。ある日、荷物の積み卸し作業中に、突然意識を失って、その場で倒れてしまいました。
Xさんは、救急搬送されて、一命は取り留めましたが、脳梗塞の診断を受けました。退院後も、自分で歩くことがほとんどできない状態になり、会話がうまくできず、覚えたことも数分で忘れてしまう状態になりました。
Xさんは、脳梗塞を発症する1か月前に、120時間残業していました。

会社に請求できる損害賠償
1. 休業損害
治療を継続している間(症状固定までの間)、休業補償給付や休業特別支給金として、おおむね労災前賃金の80%が補償されます。
これとは別に、おおむね労災前賃金の40%を、休業損害として会社に請求することができます。
2. 入通院慰謝料
入通院の期間に応じて、入通院慰謝料を請求することができます。入院期間が長い場合、入通院慰謝料が数百万円になるケースもあります。
3. 後遺障害逸失利益
程度に応じて、後遺障害によって将来にわたって減少することが見込まれる収入分を、後遺障害逸失利益として請求できます。
例えば、障害等級2級の認定を受けると、将来にわたって就労ができないことを前提に、後遺障害逸失利益を請求することができます。
労災保険から受け取ることが見込まれる一定年数の障害補償給付(年金)を差し引くことや、中間利息控除という一定の減額を行うことから、将来見込まれる賃金をそのまま受け取れるわけではありません。もっとも、障害等級が高い場合は、後遺障害逸失利益が数千万円になるケースもあります。
4. 後遺障害慰謝料
障害等級に応じて、一定額の後遺障害慰謝料を請求できます。
例えば、障害等級2級の認定を受けると、2370万円(赤い本基準)の後遺障害慰謝料が認められます。
5. その他
その他、ケースによって、近親者の慰謝料や、付添看護費、将来介護のために必要な費用などが認められます。
具体例2

作業中の事故で亡くなったケース

Xさん(男性・40代)は、工場での作業中に、機械に巻き込まれる大事故に遭い、救急搬送されましたが、亡くなりました。Xさんは、生前、妻(40代)と、子2人(15歳・10歳)の4人で暮らしていました。

会社に請求できる損害賠償
1. 死亡逸失利益
ご本人が存命であれば将来受け取ることができた収入から、一定の割合(30%~50%)を控除した分を、死亡逸失利益として請求できます。
ご本人の収入によりますが、死亡逸失利益は、数千万円になるケースが多くあります。
2. 死亡慰謝料
2000万円~2800万円(赤い本基準)程度の死亡慰謝料を、請求できます。特に、ご本人が一家の大黒柱であった場合、死亡慰謝料が高額になります。

会社との交渉・訴訟を有利に進める2つのポイント

それぞれ、順番に詳細を説明してまいります。

01いち早く弁護士のアドバイスを受ける!

弁護士に相談して、専門的な情報を入手

何よりも大切なことは、いち早く弁護士に相談し、「何を会社に請求できるか」、「どのような準備をすればよいか」、専門的な情報を入手することです。
会社に請求できる損害額の考え方は、かなり複雑です。「ライプニッツ係数」「中間利息控除」「賃金センサス」「労災保険との調整」・・・と、専門用語が渦巻く世界です。専門的な法律知識がなければ、正確な理解することが大変難しいです。
ぜひ、労災問題のプロフェッショナルである私たち弁護士にお任せください。被害に遭われた方のご事情を丁寧にうかがって、的確なアドバイスを差し上げます!

02弁護士のアドバイスに従って「争う準備」を進める!

自己判断ではなく、弁護士に判断を委ねる

会社と有利に交渉を進めるために必要な資料は、ケースバイケースです。私たち弁護士は、定型のリストを見ながら必要資料をご案内するのではなく、事案1つ1つの性質を吟味しながら、必要な資料を見極めています。会社と争うためには、自己判断ではなく、弁護士のアドバイスに従って「争う準備」を進めることが大切です!

まずはお問い合わせください
労災事件の相談は初回無料!
フリーダイヤル
0120-7867-30
月〜土 9:00〜20:00
フォームでお申し込み
365日24時間受付